車検に通すための整備は、していません 〜車検前に整備士がやっていること〜

トレーラーの車検には、大きく分けて二つのやり方があります。
整備工場のなかで検査まで済ませる方法と、整備を終えた車両を運輸支局の検査場へ持っていって検査を受ける方法です。
私たちがとっているのは、後者のやり方です。

車両を検査場まで運ぶ手間がかかりますし、当日は人も時間も取られます。
それでもこの形を続けているのは、社外の目を必ず一度通しておきたいからです。

自社で整備をして、自社で問題なしと判断することが必ずしも「手抜き」になるわけではありません。
しかし、判断が自分たちの輪の外に出ないままだと、基準はどうしても内向きになっていきます。

外部の検査を必ず経由する仕組みにしておけば、見落としがあればそこで止まります。
その前提があるだけで、日々の整備に向き合う姿勢は変わってくるものだと考えています。

検査に通すための整備はしない

だから私たちは、検査場に持ち込む前の整備には、かなりの時間をかけています。

車検は車両が基準に適合しているかどうかを確認する場ですが、整備士たちが向き合っているのは、その少し手前のことです。
検査に通る状態に整えるのではなく、車両そのものを万全な状態に戻してから検査を受けるのです。
順番としては当たり前のようでいて、時間に追われる現場ではなかなか徹底できない部分でもあります。

主要な部位は分解して、内部の状態まで確認します。
摩耗や劣化の兆候が見つかれば、基準の範囲内におさまっていても交換することがあります。
判断するときに見ているのは、いま使えるかどうかではなく、この先の一年を任せられるかどうかだからです。

「基準を満たしているのだから問題ない」という考え方も、もちろん成り立ちます。
ただ、車検を受けた翌日から、その車両はまた何万キロと走ることになります。
そこを起点に考えると、基準ぎりぎりの状態で送り出すという選択にはなりませんでした。

タイヤの残り溝、ブレーキまわり、足回り、エンジンまわり。
長距離を走る大型車両にとっては、どこか一箇所の不具合が大きな事故につながります。
ですから、数値に異常が出ていなくても、手ざわりや音に違和感があれば、そこで手を止めて中を見ます。
この工程を省かないことが、結局は一番の近道になります。

トレーラーが止まるということ

整備にここまで手をかけているのは、安全のためというだけではありません。

トレーラーが動かなくなれば、お預かりしている荷物もその場で止まります。
納期は遅れ、お客様の先の取引先にまで影響が及ぶことになります。
運輸会社にとっての車両トラブルは、修理費で収まる話ではなく、お客様の事業そのものを止めてしまうリスクです。

裏を返せば、車両が問題なく走り続けているかぎり、そのリスクは表に出てきません。
何ごともなく荷物が届く日を積み重ねていくことが、運送会社としての一番の仕事だと考えています。

安全を支えているのは整備士です

安全な運行を支えているのは、工場で働く整備士たちです。

車両は年々複雑になっていて、電子制御が関わる領域も広がりました。
以前のように経験だけで判断できる場面は減り、整備士は新しい技術を学びながら、必要に応じてメーカーに問い合わせて、一台ずつ確認していくことになります。

成果が数字で見えるわけでもなく、うまくいっている日ほど何も起きません。
それでも、私たちの車両が今日も予定どおりに走っているのは、検査場に入るずっと手前の段階で、誰かがボルトを一本ずつ確かめているからです。

私たちはこれからも、お客様のお荷物とドライバーの安全を大切に進んでいきます。

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